個人的には、なんとも妙なタイミングでやってきた試合だった。

今、Football Manager 2026のカスタムデータベースを作るため、なでしこリーグの選手をひとりずつ登録している。そして今週、ちょうどVONDS市原までたどり着いたところだった。何日も夜な夜な、選手たちを「名前」「ポジション」「年齢」「細かい能力値」として眺めていたわけだ。

それが突然、画面の中で本物の人間になって、スフィーダ世田谷の勝利を全力で邪魔している。

Football Manager、ノートPCから脱走。

スフィーダのスタメンに大きなサプライズはなし。堀江美月と内田美鈴が揃って先発なのはちょっとワクワクする。そして今日は白のアウェーユニフォーム。今季、そこまで何度も見た記憶がない。

そして、ゼットエーオリプリスタジアム。

ピッチは、まあ……かなりお疲れ気味だった。このカテゴリーでサッカー場を維持するのに潤沢な予算があるとは思えないし、そこを必要以上に悪く言うつもりはない。

とはいえ。

もうちょっとだけ、愛情を注いであげてほしい。

ゴール裏も、ポストのすぐ先で芝生が突然終わっているように見える。どうでもいい。本当にどうでもいい細部だ。

だから当然、前半のかなりの時間、それを見ていた。

VONDS、こちらの台本を読んでいない

開始5分もしないうちに、渡邊那奈がいきなり素晴らしいクリアを見せる。

ヒーロー。

いつも通り。

スフィーダも前へ出ようとするが、試合はピッチと同じで少しガタガタしていた。攻撃は途中で切れる。分かりやすいオフサイドもある。リズムが出ない。

そしてVONDSがコーナーを取り始めた。

一本。

また一本。

14分に一本。さらにもう一本。17分にはクロスを大塚美緒が弾き出し、はい、またコーナー。

一時期、サッカーから「どっちが多くCKを蹴れるでしょう選手権」に競技そのものが変わったのかと思った。

幸い、VONDSのコーナーはそこまで怖くない。

だからといって、安心できるわけでもない。

VONDSは2026年のリーグ開幕から14連敗。失点も重なり、得失点差はマイナス33。昇格チームにありがちな、かなりしんどいシーズンだった。

ところが、何かが変わった。

2位のラブリッジ名古屋(ちなみにスフィーダは最近アウェーで2-0勝利)とスコアレスドロー。その後、日体大SMG横浜、愛媛、オルカ鴨川に勝利。

4試合で勝点10。

3連勝。

3試合連続クリーンシート。

急にVONDSが組織的で、面倒で、最下位のチームとは思えないほど生き生きしている。

少なくとも、聞こえてくる音はいつものやつだった。

中継映像ではなかなか見つけられないのに、アウェーまで来たスフィーダサポーターの声はしっかり聞こえる。そして、あの長いやつが始まった。

スフィーダァァァァァ。

セタガヤァァァァァ。

よし。

いつもの世界に戻った。

たぶん。

3秒だけブラジル代表

少しずつ、スフィーダも試合に入っていく。

篠原沙耶がきれいなロングボールを送る。左では北川心音の存在感が徐々に増し、デザインされたCKから開始25分で最大のチャンス。シュートはわずかに枠を外れた。

そしてここで、戦術的に非常に重要な展開が起きる。

小田川真奈が背中を痛めたらしく、VONDSのチームメイトが彼女を斜めに持ち上げてストレッチを開始した。

現代スポーツ科学、今日も進化中。

その少し後、田口真彩が美しいノールックのバックヒールを見せた。

これなんだよな。

スフィーダを見ていて大好きなところ。

突然、2002年ワールドカップを制したブラジル代表みたいなサッカーを始める瞬間がある。バックヒール。気の利いたワンツー。誰かがライン間へスッと入っていく。

そして次のパスがタッチラインを割る。

夢は約3秒。

この絶妙な組み合わせに、完全に心を持っていかれている。

前半の残りも似たような流れだった。VONDSはスフィーダを休ませない程度には危険。一方のスフィーダは徐々に「こっちのほうが良いチームだな」と思わせるようになった。

ただし、「そろそろ点が入りそう」とまではならない。

渡邊は後方でひたすら働く。一度ポジションを外された場面でも、自分で猛ダッシュして戻って、自分で問題を片付けた。北川は左で走り続け、反対側には加藤彩愛。

アディショナルタイムには篠原がもう一本CKを入れる。

そこから堀江。

大きく上。

ハーフタイム。

0-0。

誰もひどくない。

誰も圧倒的でもない。

サッカーは、行われた。

後半は、根本彩夏の時間

後半は根本彩夏のスローインから黒川愛菜へ。いったん後ろへ戻し、最後は田口を経由して前へ運ぶ。

数本のパスだけなら、2008年頃のペップ・グアルディオラのバルセロナ。

そして崩れる。

まあいい。

それよりポジティブだったのは、スフィーダがボールを支配し始めたこと。タッチラインでは濱田貴司監督の動きも明らかに大きくなってきた。

そして試合の中心に入ってきたのが根本だった。

51分、右サイドを駆け上がってCKを獲得。その後も何度も同じサイドへ顔を出す。VONDSも時折カウンターを繰り出し、56分にはかなりきれいなパスワークを見せた。

最後のシュートはひどかった。

でも、警告にはなる。

60分を過ぎる頃には、スフィーダの圧力がかなり安定して続くようになった。

右でボールを受けた根本が、ふわりと落ちる最高のクロスをエリアへ送る。宮本遥が対応しようとした。

「しようとした」が重要。

ボールは一度バウンドして北川のところへ浮く。

ハーフボレー。

完璧に捉えた。

バー。

エグい一発。

これだけボールを持ち、危険な攻撃も増えている。

それでも0-0。

するとVONDSが少しずつ時間を使い始める。ゴールキックには妙に丁寧な儀式が加わり、20分前ならすぐ立ち上がっていたであろう選手たちも、芝生が温泉みたいに気持ちいい場所だったことに突然気づいたらしい。

まあ、責められない。

最下位。

残留のために戦っている。

一方のスフィーダは、あと数カ月で日本有数の巨大サッカークラブと新しい歴史を始める。

抱えている問題が、まるで違う。

そろそろ一本くらい入るでしょ

根本は止まらない。

また素晴らしいボールを入れ、今度は加藤まであと少し。

さらにCKを獲得し、田口がヘッド。

外れる。

VONDSも中村円香と宮本を中心に反撃してCKを獲得するが、大塚が落ち着いてキャッチ。

67分。

また根本のクロス。

堀江が合わせる。

ヘッド。

惜しい。

スフィーダは加藤に代えて荒川結乃香。何か違うものを入れにいく。

ただ、VONDSもまだ怖い。良い攻撃から鬼須美空がペナルティースポット付近でスペースを見つける。シュートは大塚が難なく処理したが、気は抜けない。

今度は堀江が、前に出ていた山田を遠い位置から狙う。

外。

75分を過ぎると、スフィーダの攻撃が失敗するたびに「またか」が少しずつ重くなってくる。

荒川が間を通そうとする。

潰される。

VONDSは選手交代。

すると急に元気になる。

ホーム側にまたCK。あまりにも時間をかけるので、本人たちも「これ、点取るところまでプランに入ってたっけ?」と確認しているように見えてくる。

その後のヘディングを見る限り、たぶん入ってなかった。

大塚がキャッチ。

ついに、真彩

残り10分。

スフィーダがもう一段ギアを上げる。

渡邊から根本。攻撃は山田に飲み込まれる。

そして突然、北川が抜けた。

VONDSの守備陣ほぼ全員を置き去りにしたんじゃないかと思う勢いで走り抜け、そのままシュート。

山田がセーブ。

CK。

スフィーダはそのまま前に人数を残す。

また攻撃。

またCK。

時計は81分を回った。

篠原が入れる。

エリア内に落ちたボールを北川がゴール方向へ向けようとする。VONDSがブロック。

でも、クリアできない。

こぼれた。

田口真彩。

左足。

振る。

ゴール。

1-0。

やっと。

田口は2026年シーズンを迎えるにあたり、「3得点」を目標に掲げていた。

リーグ戦18試合。

まだ0だった。

そして第19節、82分。

スフィーダがどうしても欲しかったゴールを、田口が決めた。

別に美しいゴールではない。華麗なパス交換も、緻密な戦術メカニズムもない。

CKを入れる。

VONDSがクリアできない。

こぼれ球を誰より強く蹴る。

サッカー、たまにはそれくらいシンプルでいい。

我々、最強。

ゴジラ級。

約6分間だけ。

ポスト

堀江に代わって佐藤里奈。

ここから目的は明確になった。

変なことしない。

お願いだから。

後半の途中まで勝点1を守ろうとしていたVONDSも、ここで突然「いや、勝点3が必要なんだった」と思い出す。

攻めてくる。

スフィーダのパスが、どんどん不安そうになっていく。

そして89分。

増田サミアがペナルティーエリアの外あたりでボールを受ける。

思いっきり振り抜いた。

大塚は届かない。

ボールはポストを直撃。

いや。

ダメ。

絶対ダメ。

ここはプロらしく落ち着いて、アウェーで1-0を締める時間だったはずじゃん。

そこからは、クリア一本一本が重要になる。

ちょっとズレたパスまで全部怖い。

アディショナルタイムは3分。

92分23秒。

VONDS、またCK。

何も起きない。

93分36秒。

まだやってる。

94分01秒。

そして94分12秒。

やっと笛。

勝った。本当にギリギリ。

シュートは8本ずつ。

CKはVONDSが10本、スフィーダが7本。両チームとも枠に嫌われた。

後から数字を並べて「スフィーダの快勝でした」と言えるような試合では、まったくない。

楽じゃなかった。

でも、楽である必要もなかった。

スフィーダはアウェーで2位の名古屋を2-0で倒した直後、残留争い中の日体大にホームで2-3で敗れた。

世田谷ではどうやら、「安定」というものはちょっとダサいらしい。

一方、VONDSは14連敗から一転して、4試合で勝点10。

最初から簡単な試合になるとは思っていなかった。

実際、まったく簡単じゃなかった。

それでも田口が今季リーグ初ゴール。大塚はクリーンシート。渡邊は、いつもの渡邊。根本は後半に素晴らしい働きを見せ、北川はバーを叩きながら試合を通してVONDSを困らせ続けた。

そして何より。

スフィーダは市原から勝点3を持って帰る。

これで「もしかして下に巻き込まれる?」という最後の不安も、そろそろ消えてくれればいい。

今季はもう十分いろいろ起きている。

ここに残留争いまで追加しなくていい。

VONDSには最後まで苦しめられた。

増田の一発は、あと数センチで全部を台無しにするところだった。

でも、ならなかった。

それで十分。

白きシャツ 千葉をあとにし
こぼれ球 今日を決めたり
もう下を見るな

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