約6万4,000人の前に立った16歳は、その景色が当たり前であるかのようにプレーしていた。
新しいJリーグシーズンの開幕戦。開始7分。三井寺真がプロとして初めて意味のあるボールタッチを見せ、そのまま歴史に名前を刻んだ。
ゴール。
歓声。
そして記録。
花火が夜空を染め、レーザーが国立競技場を照らす中、日本サッカーの未来が予定より少し早く姿を現した。
本来なら、ここから復活の物語が始まるはずだった。
だけど、フットボールは時々、本当に意地が悪い。
3-1なら十分だったはず
4-3で逆転負けを喫げれば、「危機だ」と叫びたくなる気持ちは分かる。
スティーブ・コリカの采配を全部疑いたくもなる。
「去年から何も変わってない」と言いたくもなる。
でも、自分はそう思わない。
こういう試合はある。
本当にある。
少し異常なくらいの試合ってやつだ。
58分間、マリノスはようやく”マリノスらしさ”を取り戻し始めたチームに見えた。
三井寺は圧巻だった。
攻撃には明確な意図があった。
古巣・鹿島アントラーズとの初対戦という大きな感情を背負った知念慶も、自分の役割をしっかり果たしていた。
10本のシュートで3ゴール。
運ではなく、効率。
こういうサッカーなら、自分は大歓迎だ。
だけど、そのあと鹿島が試合をひっくり返してしまった。
鹿島は終わったなんて思っていなかった
鹿島は試合終了を誰より信じていなかった。
数字は、スコアより少し早く結末を教えてくれていた。
ボール支配率は約61%。
期待得点(xG)は約3.0。
コーナーキック9本。
シュート19本。
走る。
また走る。
そして、さらに走る。
マテウス・ブエノは以前、「サッカーはチェスみたいなもの」と話していた。
この試合は、まさにそんな感じだった。
一手一手が美しかったからじゃない。
鹿島が少しずつ、少しずつ、マリノスの逃げ道を消していったからだ。
気付けば横浜は、自陣深くまで押し込まれていた。
後半アディショナルタイム9分。
アレクサンダル・チャヴリッチがPKを決めた瞬間、「何か起こるかもしれない」と空気が変わった。
3分後。
本当に起きてしまった。
4-3を決めるゴール。
あれは単なる決勝点じゃない。
王者だけが持つ勝ち方だった。
少しだけ冷静になろう
悔しい。
それは当然だ。
交代策はこれから何日も議論されるだろう。
SNSでは、もう犯人探しが始まっている。
三井寺や谷村の交代が流れを変えたという人もいる。
決定機を外したことを責める人もいる。
でも、それもサッカーだ。
逆転負けが起きるたび、何百人もの”名探偵”が事件を解決した気になる。
だけど現実はもっと単純だ。
もしマリノスが逃げ切っていたら、その交代を批判した人はほとんどいなかったはずだ。
本当の問題はピッチの上じゃない
ここからは少し厳しく言わせてもらう。
もう国立競技場を「ホーム」と呼ぶの、やめない?
本当に。
もう十分じゃん。
なぜ開催されるのかは理解している。
日本サッカー協会も、国立競技場を管理する人たちも、このスタジアムを使いたい。
オリンピックが残した巨大なレガシー。
維持費を考えれば、イベントを入れたいのも当然だ。
約6万4,000人。
テレビ映えもする。
観客動員記録も更新できる。
それは素晴らしい。
でも。
それって、なんでマリノスが背負わなきゃいけない話なんだろう。
ホームアドバンテージには意味がある。
サッカーは稼働率を計算するスプレッドシートの中でやるスポーツじゃない。
選手が体で覚えている場所で戦うスポーツだ。
ホームは地図の話じゃない
日産スタジアムは完璧じゃない。
もちろん欠点もある。
でも。
あそこは自分たちの場所だ。
選手は景色を知っている。
サポーターはどこで声が響くか知っている。
相手は「ああ、敵の家に来た」と感じる。
国立競技場は、みんなのもの。
だから誰のものでもない。
試合前の演出は本当に見事だった。
花火。
レーザー。
約6万4,000人の観客。
新しいJリーグ時代の幕開けにふさわしいショーだった。
でも。
ショーとホームアドバンテージは別物だ。
自分が欲しいのは演出じゃない。
ホームだ。
もし、この試合が日産スタジアムだったら。
本気で横浜が勝っていたと思う。
3-2だったかもしれない。
3-1だったかもしれない。
鹿島が終盤に点を返したとしても、あそこまで流れは来なかった気がする。
もちろん、それは証明できない。
でも、誰かが巨大なスタジアムを使いたいという理由だけで、自分たち最大の武器を手放すのは、どう考えても逆じゃないか。
新しい時代にも、守るべきものはある
この試合には特別な意味があった。
THE CLASSIC。
Jリーグ最初の試合。
横浜マリノス対鹿島アントラーズ。
秋春制への移行。
オリジナル10同士。
そして、一度も降格していない唯一のクラブ同士。
最高の舞台が必要だった。
実際、その舞台は用意された。
だけど、本当に最高の雰囲気って、大きなスタジアムを借りたから生まれるものじゃない。
サポーターが「自分たちの場所」だと思えること。
何世代も同じ場所で応援してきたこと。
選手が振り向かなくても、一番熱いスタンドがどこか分かること。
「ホーム」という言葉に意味があること。
国立がくれたのはスケール。
日産がくれるのはアイデンティティ。
この2つは同じじゃない。
三井寺真が空気を変えた
敗戦の悔しさに隠れてしまったけど、この16歳は横浜のシーズンそのものを変えてしまうかもしれない。
三井寺はゴールを決めただけじゃない。
完全に馴染んでいた。
つい最近16歳になったばかりの選手に対して、こんなことを言う日が来るとは思わなかった。
試合後、日本代表の森保一監督も「この世代がもうプロで通用している姿は心強い」と語ったという。
本当にそう思う。
日本サッカーは、怖さを知らない若者を次々に生み出している。
三井寺は大舞台に飲まれなかった。
むしろ、大舞台のほうが彼に追いつくのに必死だった。
結果は痛い。でも内容には希望があった
サポーターって不思議だ。
90分を最後の笛だけで判断してしまう。
でも、この試合はもう少し優しく見てもいいと思う。
マリノスは、今の日本で一番強いと言ってもいい鹿島と真っ向勝負した。
攻撃は去年よりずっと鋭かった。
若い選手たちは恐れを知らなかった。
コリカのやりたいサッカーも少しずつ見えてきている。
もちろん、守備崩壊は見過ごせない。
でも、それまで積み重ねてきた58分も忘れちゃダメだ。
たった一つの劇的な結末で、それまでの良いサッカーまで消してしまう必要はない。
ビッグイベントは決勝戦だけでいい
観客動員記録は立派だ。
でも、勝点3のほうがずっと価値がある。
Jリーグが中立地でのショーケースをやりたいなら、カップ決勝がある。
スーパーカップもある。
代表戦もある。
開幕戦くらいは、本当のホームクラブにホームアドバンテージを返してほしい。
サポーターは国立競技場の年間パスを買っているわけじゃない。
クラブの未来を信じてシーズンシートを買っている。
この敗戦は痛い。
本当に痛い。
鹿島相手に3-1から勝点ゼロ。
しばらく忘れられないだろう。
でも、自分はこの敗戦だけで今季のマリノスを判断するつもりはない。
それより、この試合が一つの議論を始めるきっかけになってほしい。
交代策でもない。
個人のミスでもない。
横浜F・マリノスは、本当にどこをホームにするべきなのか。
「ホーム」と呼ぶなら。
ちゃんとホームであってほしい。🐦⬛
タイトル案
あったのに、逃げた。横浜F・マリノスはもう国立を「ホーム」にすべきじゃない
ハッシュタグ
#横浜F・マリノス #fmarinos #Jリーグ #鹿島アントラーズ



